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2024.09.10

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本稿を見て頂いている方は「プレバリュー・プレバリュエーション/ポストバリュー・ポストバリュエーション」という言葉を耳にしたことはあると思います。エクイティファイナンスを活用するスタートアップ業界で良く使われているこの言葉ですが、意外とちゃんと理解出来ている方は少なかったりします。
 本稿では聞いたことはあるけど、説明するのは難しいというスタートアップファイナンスに関わる方に向けて、「プレバリュエーション/ポストバリュエーション」に関して例を交えながら解説していきます。

プレマネーバリュエーションとは?

プレマネーバリュエーション(Pre-money Valuation)は資金調達前の企業価値のことです。
プレマネー、プレバリュエーションとも呼ばれ、下記の計算式で算出します。

プレバリュエーション=1株あたりの株価×資金調達前の発行済株式総数

資金調達にあたって、投資家と起業家は投資前での企業価値(=プレバリエーション)を決めます。資金調達前の株式総数は決まっているので、合意したプレバリューによって投資家に発行する株式数が変化します。
つまり、プレバリュエーションが高ければ高いほど投資家に発行する株式数は必然的に少なくなり、自分の株式保有比率の希薄化は少なくなります。

起業家と投資家の両者にとってプレバリュエーションは重要であり、起業家にとっては低すぎると調達金額に対して、自身の株式保有比率が希薄化により下がってしまい、継続的な資金調達が必要な場合は自身の経営する会社に対する経営権が薄まっていき悪影響を及ぼすこともあります。反対にプレバリュエーションが高すぎると、少ない株式保有比率の希薄化で多額の資金を調達できるので、メリットしか無いように思えますが、次回以降の資金調達で、投資家のキャピタルゲインへの期待値が低くなることで、資金調達が困難(ダウンラウンドや最悪の場合は調達できない)になる可能性が高まるなどの悪影響を及ぼします。

 特に資金調達を初めて行う起業家がスタートアップ投資にあまり詳しくないエンジェル投資家(個人)から高めのバリュエーションで資金調達を実行し、次回以降の資金調達ができないケースが散見されます。

投資家にとっても一般的に考えられる相場よりも低いプレバリュエーションで投資出来た場合は、投資をしたスタートアップ企業がEXIT(IPOやM&A)出来た場合のキャピタルゲインへの期待値は高まりますが、資金調達のラウンド(特に創業初期)で、外部の投資家が株式を持ちすぎると、その後の資金調達がスムーズ行かずに、結果としてスタートアップ企業の成長を阻害して、EXITへの期待値が下がることもあります。
資金調達前のバリュエーション(企業価値評価)はDCF法や類似企業比較法など様々な手法がありますが、なにがフェアバリューなのかという点については、不確定要素が多いスタートアップ企業では正しい企業価値を算出することは実際には非常に難しくなります。

ポストマネーバリュエーションとは?

ポストマネーバリュエーション(Post-money Valuation)は資金調達後の企業価値です。
ポストマネー、ポストバリュエーションとも呼ばれ、下の式で表されます。

ポストバリュエーション =プレバリュエーション+資金調達額1株あたりの株価×資金調達後の発行済株式総数

資金調達後の発行済株式総数は、資金調達前の発行株数+資金調達時の発行株数の和です。ポストバリュエーションは株価×株式総数による計算だけでなく、単純にプレバリュエーションに資金調達額を足すことでも計算できます

次にプレバリュエーションとポストバリュエーションの関係について、実務でよく使われる資本政策表を用いて、具体的な例を使って説明しましょう。

あるスタートアップ企業が会社設立直後に500万円の資金調達をしたいと考えています。
資金調達前の発行株式総数が500株の時に、プレバリュエーションが5,000万円の場合と1億円の場合では、株式保有率やポストバリューなどは下の図のように変化します。

プレバリューが5,000万円の場合、1株あたりの株価は10万円です。500万円を資金調達するには、500万円÷1株あたりの株価(10万円)=50株を新たに発行する必要があります。その結果、資金調達後のポストバリューが5,500万円となり、起業家の株式保有率は90.91%、投資家の株式保有比率は9.09%となります。

次にプレバリューが1億円の場合、1株あたりの株価は20万円です。
上と同様に計算すると、資金調達後のポストバリューが1億500万円で、新規発行株式数は25株になるので起業家の株式保有率は95.24%、投資家の株式保有比率は4.76%となります。

同じ額を調達しているので、ポストバリューはプレバリューの差額分5,000万円の違いとなります。
一方で、株式保有率は4.33%という僅かな差に見えますが、資金調達を繰り返すスタートアップ企業にとっては、この差が将来的には大きな違いを生みます。しかし、冒頭にも記載したように企業価値が高ければ高いほどいいという訳ではありません。

まとめ

今回は、プレバリュエーションとポストバリュエーションについてご紹介いたしました。
聞いたこともあるし、なんとなく理解はしていたけど、計算式で説明は出来なかったという方も居たのではないでしょうか。
実務においてもpreとpostの計算を間違えてしまっている担当者の方を見かけることも少なくないです。
本稿をご覧いただいた方の参考になれば幸いです。

ソーシング・ブラザーズには経験豊富なCVCキャピタリストが多数在籍しています。
CVC投資やスタートアップ企業との協業に関心がある、資金調達をする必要がある、自社の資本政策について相談したい、また詳しく話を聞いてみたいという方はお問い合わせください。